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ゴシックの本質

「ゴシックの本質」、ラスキンによるゴシック礼賛。

本書のなかで、ラスキンは「ゴシックの特徴的な要素」として、つぎのものを挙げている。

1.荒々しさ

2.変わりやすさ

3.自然主義

4.グロテスク性

5.剛直

6.過剰さ

ゴシック的なものは、しばしば、「粗野とか不完全」と非難されることがあるが、それに対して、ラスキンは言う、「建築は不完全でなければ真に高貴なものとはなりえない」(p49)と。その理由を彼は二つ挙げる。ひとつは、「偉大な人間というものは、失敗の地点にいたるまで仕事をやめることが決してないということ。」つまり、偉大な人間の作品には、完成はないということなのだろう。もうひとつの理由は、「不完全さというものが、われわれの知るかぎりでのすべての生命にある程度本質的なものだということ」(p52)その不規則・不完全さは、「生命のしるしであるだけでなく美の源泉でもある」とラスキンは言う。

さらに、「2.変わりやすさ」であるが、意味がわかりにくいが、別の言い方をすれば「多様性」ということらしい。その確保のため、ラスキンは「下級の職人に独立した仕事の仕方を認める」べきと主張する。建築をキリスト教的なものとするためにも、そのことが必須だと彼は言うのだが、その結果、生じるのが、「建物のあらゆる相に絶えざる変化が生じること」(p53)だという。「職人が完全に奴隷とされているところでは、どこでも建物の各部分は当然絶対に画一的なものとなるはずで」あり、「ゴシックの建物のように意匠と施工の両方に不断の変化がみられるのならば、職人は完全に自由にされていたにちがいない」とラスキンは分析する(p54)。

「3.自然主義」とは、「自然界の事物をそれ自体のために愛すること、そしてそれを芸術上の法則に束縛されずに率直に表現しようとつとめること」(p70)。そして「4.グロテスク性」。「崇高な姿と同様に、空想的で滑稽な姿を喜ぶ傾向がゴシック的想像力」にはあると言う(p109)。「5.剛直」とは「安定しているものではなく、活発な剛直」(p110)であるという。最後に「6.過剰さ」について、ラスキンは、「その労働の富を計算せずに与えること」と表現する。

こうしたゴシック観からは、ラスキンという人が美と倫理を直結させる人であったことが伺える。

起業の実態

「<起業>という幻想―アメリカンドリームの現実」(スコットA シェーン)を読んだ。

米国における起業の実態について、データに基づき分析した本。世上言われていることとかなり違うこともあり、とても興味深い。この本で、起業とは、「リスクを前提としながら、ビジネスや事業を組織し、マネジメントを行う活動のこと」であり、「起業家は、このような活動に携わる人間を意味する」(p16)。

こうした本の場合、そもそも前提としたデータの信憑性とその分析手法が問題である。著者は、筋のいいデータだけを扱ったと述べている(p14)。註の(1)にデータソースの一覧が出ている。ただデータとその分析手法そのものが示されることは少ないので、読者としては著者を信頼するほかない。それが本書の読みやすさをつくりだしていると思うが、少し不安は残る。

また巻末に分析結果として本書が呈示する知見の要約が、「神話と現実」として67項目にわたって記載されており、非常に読みやすい。

本書によれば、「典型的なスタートアップ企業は、非常にありふれたものであり、イノベーティブ(革新的)でもなく、在宅ビジネスが中心であり、開始の時点でも、それ以降でも、その規模はごく小さい」。また「たいていの起業家は、ビジネスアイデアを計画的に探究していないし、そのアイデアの評価もしていない。それよりも、前の職場と同一か似たような顧客に、やはり同一か似たような製品を提供している」

そして、だからこそ、とでも言うべきか、たいていは、5年以内で倒産してしまうし、サラリーマン時代と比べて、稼げないばかりか、労働時間も長くなる傾向がみられるという。起業の成功率はきわめて低いのである。そうした現実があるにもかかわらず起業を目指す人が多いのは、①他人の下で働くことより自分のために働くほうが本人にとって幸せであるから、②成功のチャンスに過剰に楽天的だからであるという。

起業を成功させるためのポイントについても、この本は、つぎのように幾つか挙げており、参考となる。

・起業の際に、どの業界を選ぶかは重要である。
・新規のビジネスは業績はよくないのが常であり、ビジネスは長く続けたほうが、業績は改善される。
・なぜ起業したのか、理念や目標は大事である。
・その業界で働いていた経験は起業にとってプラスとなる。

ユニークであること

「最強の「ビジネス理論」集中講義 ドラッカー、ポーター、コトラーから、「ブルーオーシャン」「イノベーション」まで」(安部徹也著)を読んだ。とても読みやすい良書だと思う。類書は他にもあるが、記述が丁寧なので信頼して読める。

この本からSMARTの原則について。「ミッションを明確なビジョンに落とし込む際の基準として、一般的に活用されているSMARTの原則というフレームワークがあります。」(p24~26)SMARTの意味は以下のとおり。

S⇒ Specific 具体的である
M⇒ Measurable 数値で計測できる
A⇒ Agreed upon 同意できる
R⇒ Realistic 現実的
T⇒ Time bound 期限を設ける

目標を立てることは重要だが、立てた目標が抽象的であったり、非現実的なことも多い。そうならないために、この原則が役に立つ(自分の場合は、Measurableということが特に弱いな)。

もうひとつ、USPという略語について。「顧客が購入に至る理由は、しばしばUSPと呼ばれ、マーケティング戦略上重要なカギを握ります。USPとは、Unique Selling Propositionの略で、簡単にいえば自社が提供する独自の売りのことです。」(p97)

これも常に考えなければならない。否が応でも、僕らの人生は競争状態におかれている。サヴァイブするためには他人と異なる点を持たねばならない。人と同じではいけない。現実社会で行われているのは、そういうタイプの競争なのだ。だからUniqueでなければならない。しかし、ただUniqueであればそれでいいのかと言えばそうでもない。社会の大多数のニーズは踏まえておかねばならない。そこを外すと、誰も買ってくれないだろう。絶対に外してはならないポイントを踏まえたうえで、Uniquenessを目指さねばならない。