ぼくは生業の一つとして、昨年から行政書士登録をしている。どのように業務を行っていくか考えるなかで、「行政書士の業務展開」(成文堂)を読んだ。
この本には、タイトル通り、行政書士の様々な業務展開について幾つかの論稿が掲載されているのだが、そのうち近藤秀将氏の「行政書士「コンテンツ」経営論」は非常に参考になった。
「他士業と異なり」、行政書士の場合は、「各行政書士によって大きく専門分野が異なっており」、行政書士会自体が「行政書士のキャリア像(行政書士のあるべき姿)」を示し得ていない現状が指摘されている。確かに行政書士というと、一般に何をする人なのか、よくわからないと言われることが多い。
この現状に対して近藤氏は、「だからこそ、各行政書士自身が、独自のスキームを確立する余地があるとも言え」、「行政書士の業務スキームに創造性が介入する余地を広げている」(p22)と言う。この近藤氏の見解は、これから行政書士を名乗り、業務を行う僕にとって、大きな示唆を与えてくれる。
漫然と行政書士を名乗るのでは業務にならない。自分自身でキャリア像を設定することが極めて重要である。ぼくの場合、その設定にはもう少し時間がかかりそうであるが、今のところ、キャリア像を思うときに、浮上しているのは「ソーシャルデザイン」という言葉である。 このキーワードに基づき、行政書士としてのキャリアデザインを構築していきたいと考えている。 ソーシャルデザイン:wikipedia
言うまでもなく資格というのは、それを取得すれば収入が保障されるようなものではない。他士業同様、行政書士資格も取得すれば、直ちにそれで食えるような類のものでは全然ない。資格取得はゴールではなく、スタート地点にすぎない。 行政書士に登録するまでには正直に言って逡巡した。特に、ネット上の情報では行政書士は「食えない資格」と言われることが多い。
登録してみてわかったことは、本当に人それぞれで、廃業する人も多い反面、活躍している人も多い。つまり「食えない資格」ではなく、実際にそれで「食えている」人も多い。行政書士の平均年収が他の士業と比べて低いというデータもあるが、それにも理由があるようだ。行政書士の場合、他の事業経営や他の士業と兼業している人も多くいて、そうした場合、行政書士としての収入部分が極めて低い場合も少なくない。また行政書士の場合、一定の年数を経た公務員の登録が認められており、公務員を定年退職した後に登録する例も多い。そうした方の場合、悠々自適にマイペースで業務を行っていることも少なくない。どうやら、こうしたことから、結果的に平均年収が低くなるようである。
行政書士会に登録するためには、登録料、年会費がかかる。それに見合うだけのメリットがあるのか不安もあったが、登録をすると、様々な研修の機会が用意されていて、その機会を享受できるだけでも登録した意味があった。この点は登録してみないとわからない。求めれば、それに応えてくれるだけの支援体制や、つながりが行政書士会にはある。下世話な言い方であるが、納めた年会費以上のメリットを享受できる。登録をして本当によかったと実感している。
行政書士の業務範囲は、社会全般、多岐にわたっており、そのなかで自身の課題・テーマを見出し、取り組んでいくことが可能であり、ソーシャル・デザインに携わりたいという、ぼくのキャリアイメージを実現するために、行政書士資格を切り口・出発点とするのは、悪くない選択肢だと思っている。