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ノイズ

インゴ・メッツマッハー氏の「新しい音を恐れるな 現代音楽、複数の肖像」を読んだ。この本で氏は、ノイズについて次のように語る。

「ぼくたちが耳にするものの大半はノイズだ。構造のない響き。音楽の世界でいう「音」とは違う。楽音は特別だ。楽音には規則的な振動がある。これは、あたりまえのことではない。たえず音響を発しているこの世界では、規則正しい振動の方が例外だ。」(p126)「ノイズの世界は無限だ。大いなる自由を秘め、生そのものがそこにある。不安を感じることもあるだろう。もしかすると、音楽の世界がこれほど長い間ノイズを排除してきた本当の理由は、ここにあるのかもしれない。」(p128)

宗教的な秩序立った世界が破綻するにつれ、ノイズが「工業化社会の生の真実をあらわす音」として意味を持ち始めたと インゴ・メッツマッハー氏 は指摘する。第二次世界大戦後のパリで、「ミュジック・コンクレートが誕生」し、「このときから、電子音楽スタジオで音楽が作られるようになる。録音テープと正弦波ジェネレータを使って。」これによって音楽家は「自分だけの楽器を持ちたいという昔からの夢」を実現することなる(p132)。

電子音楽のパイオニア、カールハインツ・シュトックハウゼン思い出をメッツマッハー氏は次のように語る。

「コンタクテ」という作品における「個々の音をスタジオでどうやって作ったのか。シュトックハウゼン本人から聞いたことがある。『コンタクテ』の場合は、まず木、革、金属などいろんな材質のものを叩き、それを録音して、なんらかの楽音やノイズに聞えるまで加速した」(p136)という。音の振動(パルス)が不規則であれば、ノイズとなるが、振動を加速していくと、発振が連続し、個別の振動は聞えなくなり、替わりに「ある音高をもった音として聞える」ようになるという。「シュトックハウゼンはスパゲティを作るのに、まず麺を手打ちするところから始めたのだ。」(P 137)。