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起業の実態

「<起業>という幻想―アメリカンドリームの現実」(スコットA シェーン)を読んだ。

米国における起業の実態について、データに基づき分析した本。世上言われていることとかなり違うこともあり、とても興味深い。この本で、起業とは、「リスクを前提としながら、ビジネスや事業を組織し、マネジメントを行う活動のこと」であり、「起業家は、このような活動に携わる人間を意味する」(p16)。

こうした本の場合、そもそも前提としたデータの信憑性とその分析手法が問題である。著者は、筋のいいデータだけを扱ったと述べている(p14)。註の(1)にデータソースの一覧が出ている。ただデータとその分析手法そのものが示されることは少ないので、読者としては著者を信頼するほかない。それが本書の読みやすさをつくりだしていると思うが、少し不安は残る。

また巻末に分析結果として本書が呈示する知見の要約が、「神話と現実」として67項目にわたって記載されており、非常に読みやすい。

本書によれば、「典型的なスタートアップ企業は、非常にありふれたものであり、イノベーティブ(革新的)でもなく、在宅ビジネスが中心であり、開始の時点でも、それ以降でも、その規模はごく小さい」。また「たいていの起業家は、ビジネスアイデアを計画的に探究していないし、そのアイデアの評価もしていない。それよりも、前の職場と同一か似たような顧客に、やはり同一か似たような製品を提供している」

そして、だからこそ、とでも言うべきか、たいていは、5年以内で倒産してしまうし、サラリーマン時代と比べて、稼げないばかりか、労働時間も長くなる傾向がみられるという。起業の成功率はきわめて低いのである。そうした現実があるにもかかわらず起業を目指す人が多いのは、①他人の下で働くことより自分のために働くほうが本人にとって幸せであるから、②成功のチャンスに過剰に楽天的だからであるという。

起業を成功させるためのポイントについても、この本は、つぎのように幾つか挙げており、参考となる。

・起業の際に、どの業界を選ぶかは重要である。
・新規のビジネスは業績はよくないのが常であり、ビジネスは長く続けたほうが、業績は改善される。
・なぜ起業したのか、理念や目標は大事である。
・その業界で働いていた経験は起業にとってプラスとなる。