ぼくは、専らロックミュージックを聴きながら過ごして来た。それは他ジャンルの音楽に対しては非寛容で聴く耳を持たなかった、ということでもある。50歳を超えた現在も、ロックミュージックはよく聴くが、同時にこれまで聴こうともしなかった他ジャンルにも触手を伸ばすようになっている。これは、ぼく自身にとっては大きな変化である。年齢を重ねると、実は感性は豊かになるのかもしれないと密かに思ってみたりしている。
そうしたこともあって最近はジャズである。オリジナルアルバムの5枚セットといった廉価版CDもかなり出回っているのでありがたい。ジャズは、歴史もあり奥が深いが、どのように音源コレクションを形成していけばいいのか。中山康樹氏の「超ジャズ入門」(集英社新書)はその問いに答えてくれる。
ジャズCDのコレクション法について、中山氏は次のように言う。「ジャズは100人のミュージシャンの100枚を聴くより、ひとりのミュージシャン(あるいはレーベル)の100枚を聴くべきです。」(p220)
ずいぶん変わったことを言うな、というのが率直な感想だが、中山氏が薦めるミュージシャンはマイルス・デイビスであり、レーベルはブルーノートである。本書で、中山氏は自説の根拠・理由について説明しており、「あ、なるほど」と僕などは説得されてしまった。ジャズに対する愛の詰まった一冊。