平井孝志氏の「本質思考 MIT式課題設定&問題解決」(東洋経済)を読んだ。
本質から考えることの重要さを伝え、その手法としてのシステムダイナミクスを紹介する一冊。システムダイナミクスとは、「MITのジェイ・フォレスター教授によって生み出されたコンピュータシミュレーション」(p57)を出発点とする理論である。それは科学の一般的な手法である「要素還元主義に対するアンチテーゼ」(p59)としての意義を有し、「全体を俯瞰するスタンス」(p59)が特徴である。「ものごとの本質を、現象の裏側にひそむ「構造(モデル)」と「因果(ダイナミズム)」として捉える。」(p53)
モデルとは、「現象を生み出す構造、つまり、構成要素や、それらの相互の関係性のこと」(p53)であり、ダイナミズムとは「そのモデルが生み出す現象について、長い目でみると、どのような結果や動きが見られるのか」、「どのようなパターンが見られるのか」(p54)を意味するという。そして真の問題解決に導くためには、「ダイナミズムを理解し、モデルを変えること」(p70)が必要であるという。
モデルにもダイナミズムにも典型的なパターンがみられ、それぞれを把握する際のヒントやポイントが本書では具体的に説明されており、大変に参考になる。そして理想的な問題解決とは「読み解いたモデルとダイナミズムをもとに、モデルを変えるためのレバレッジポイントを見つけ、モデルを変えていくこと」(p161)と著者は言い、レバレッジポイントを探る際のヒントも挙げている。本書に実際にあたって確認してみてほしい。
かなり重厚な理論が、シンプルに、かつわかりやすく述べられており、手元に置いておきたい一冊である。